弱音が吐ける教会が教会です

                         11時のキングスチャペル
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                                           主に仕えるごとく (下)
                                           コロサイ3章22-4章1節
       

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  先週は、「弱さを絆とする共同体」ということを申しました。今日の所でもそういう面があります。

  奴隷も主人も共に弱さを持っています。その弱さを奴隷も主人も隠さず、主の前に持ち出すことができる共同体。それが教会です。会社では弱いことは言えません。弱音を吐けない。ゴーゴーゴーの雰囲気です。でも教会は強いことしか言えない共同体ではない。弱さが告白できる共同体です。弱さが言えるから、教会は慰めの共同体であることができるのです。

  長く関西で副牧師をして来られたある婦人牧師が、ある教会をお辞めになり、引退されました。明るい、いつ見ても笑顔が漏れる背の高いご婦人ですが、表向きは、もう年だからということです。

  しかし本音は、その教会が活発な主任牧師に変わり、その主任牧師から、信仰者は弱音を吐くべきではない。信仰があれば強くなれる。あなたは牧師だからなおさら弱音を言うべきではない。強くないのは信仰が弱いからだというようなことを言われたからだというのです。

  どうしてそんなことになったかというと、この婦人牧師は、ご主人は牧師でなく別の職業を持つ方でした。そのご主人が突然病気で亡くなられたのです。それで心を強く持とうとするのですが悲しみが出て来る。それでも教会では決して涙ぐむことなく、明るく笑顔を見せているのに、主任牧師から信仰が弱いと言われたのです。

  弱さを見せられない教会。悲しみを見せられない教会。涙を流せない教会。それは一体教会なのでしょうか。

  「いかに幸いなことでしょう。弱い者に思いやりのある人は」、と詩編にあります。弱い者を弾き飛ばさない教会と、先週申しました。だが、牧師自らが、弱い者を弾き飛ばす教会。そんな教会になっている。そこにキリストの愛、贖(あがな)い、赦しはあるのでしょうか。それでは偽善者しか生みません。

  奴隷と主人。そのいずれもが弱さを持つ人間として主の前に生き、時には主人が奴隷を励ましますが、時には奴隷の方が主人を励ますことがある教会。それが、使徒言行録に出て来るキリストの血で贖い取られた主の教会です。奴隷も主人も共に主の血で贖い取られている。教会の尊さはそこにあります。

  なぜ弱さが教会から排除されるのでしょうか。それは、余りにキリスト教教理で固まっているからです。頭でっかちで、愛がない。生身の人間に触れておらず、自分自身の中にあるどうしようもない罪と弱さにも触れていないからです。教会が信仰の管理者になっている。

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  「人にへつらおうとしてうわべだけで仕えず」、「真心を込めて」、何事も「主に対してするように、心から行ないなさい。」

  これは一番難しいことですが、ここにキリスト者の輝きの秘密が隠されています。これは人に押し付けることではありません。自分に言い聞かせ、自分を切磋琢磨すべきことです。

  なぜなら、「主に対してするように」と言われているのは、主がどれだけ多くの愛を自分に注いで下さったかを知るからです。主に対してするのは、主が私のために命を捨てて下さったからです。また、誰が自分を見捨てても、主は私を見捨てられないからです。最後まで責任をもって下さる。

  パウロは、私たちを主に直面させ、主との出会いの中で、どう生きるかを考えさせています。

  主に直面させられる。主に向かって生きる。主との関係で生きる。これが人間の一番大事なことです。問題は人でなく、自分自身がどう生きるかです。

  人はいつまでも生きません。若い方も、明日自分はこの世にいないかも知れません。明日死ぬかも知れないと考えて、自分は主の前で、今日どう生きるかを考えて生きましょう。今日は申しませんが、終末的生き方とはそういう生き方です。

          (完)


                                        2011年6月26日


                                     板橋大山教会   上垣 勝


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