互いに敵でなく友です


                    春が待ち遠しいです。やっと大雪の峠が越えました。  
                               ・


                                              世界に大きく枝を張って (下)
                                              マルコ4章30-32節


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  今日は、ここにエキュメニカル・カレンダーというカレンダーを持って来ました。日本キリスト教協議会NCCが、5年前から出しているカレンダーです。

  1年の52週か、53週かある日曜日毎に、日本のキリスト教の多種多様な働きのために祈るようになっています。NCCに加盟している教会は当然ですが、毎年、加盟していない教会のためにも祈り、色んなキリスト教団体や活動、運動も覚えて祈ることになっています。

  例えば1月9日は、日本キリスト者医科連盟と日本キリスト教海外医療協力会JOCSのために祈られました。医科連盟はすでに戦前にその萌芽がありましたが、正式には戦後間もなく発足した非常に長い歴史を持つ団体です。海外医療協力会JOCSは、アジアの人たちに犯した戦争責任を深く反省して設立されました。平和と和解を願って、アジアやアフリカに保健医療従事者を派遣し、アジアの草の根で働くそういう人たちの人材育成もしています。現在は「女性と子ども」「障がい者」「少数民族」「HIV感染者」に焦点を絞った活動が行われています。

  1月16日は、「キリスト教一致祈祷週間」と「NCC信仰と職制委員会」のために祈られました。「一致祈祷週間」はプロテスタントNCCカトリックが共同して行なっていますが、世界的には、世界教会協議会カトリック教皇庁が協力して行っている世界的な働きです。

  また、「NCC信仰と職制委員会」はカトリックロシア正教会からも委員を招いて活動しています。NCCはキリスト教の一致と信頼を作る大切な働きの上に、教会的・社会的な諸活動をしている訳です。

  NCCには「東アジアの和解と平和委員会」というのもあります。これは国交断絶している国にある教会とも交流を行なおうと働いている委員会です。難しい課題ですが、例えば北朝鮮の教会とも連絡を取り合い交流を深める重要な働きです。この働きのために先週の23日に祈られました。北朝鮮の脅威が言われますが、今の金正日の奥さんは戦後まで大阪にいた人でした。日本で、日本人と生活した人で、その後北朝鮮に帰った。戦前の日本の強権的な横暴な植民地政策が奥さんの家族も日本に連れて来たわけで、あの金正日の家庭にも日本の侵略戦争の影が落ちています。この委員会は、こういうアジアの国際間の和解と平和のために働いています。

  今日は、日本バプテスト同盟のために祈られます。来月は日本聖公会福音同盟リバイバル同盟のため、3月は無教会の東京聖書集会、4月は日本バプテスト連盟、6月は日本ハリストス正教会日本キリスト教団という風に、その他にもルーテル教会や在日大韓教会など色んな教派や教会のために1年にわたって祈られます。

  また、キリスト教の活動であるキリスト者政治連盟キリスト教保育連盟、AVACOやYMCAやYWCA、盲人伝道協議会やクリスチャンアカデミー、その他、外登法問題と取り組む全国キリスト教協議会やNCCの働きである「平和と核委員会」、「靖国神社問題委員会」、「在日外国人の人権委員会」などについても祈られます。

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  長くなりましたが、私はこのカレンダーを目にして、日本におけるキリスト教の働きの多様性、広がり、大きさ、その深さなどを思いました。例えば、キリスト教プロテスタントカトリックロシア正教会という3つの太い枝に分かれ、プロテスタントは更に多くの小枝に分かれていますが、このカレンダーが証ししているのは、それらすべては私たちの友の働きであり、彼らは敵でなく仲間であるということだと思います。

  私たち人間は限界がありますから、思いはあっても出来ないことが幾らでもあります。時々皆さんに申しますが、私は、教会において皆さんを信仰の兄弟姉妹として持っていることを誇りに思います。心から誇りに思い感謝しています。

  それは、自分にできないことを、皆さんがそれぞれしておられるからです。私は皆さんのお仕事や趣味は何もできません。タンゴなど踊れません。お茶もできません。お料理もできない。難病の苦労もありません。バイオリンを弾けません。台所の祈りを持っていません。だが、その色んな所で信仰に生きておられる皆さんを誇りに思う時、皆さんは私の財産にも宝物にもなります。皆さんも互いにそうだと思います。血を分けた家族でも競争することが多くありますが、私たちはキリストにあって兄弟姉妹です。互いに競争する者ではありません。自分一人は小さいし弱いですが、教会という集合体で20人、30人の賜物が集まって豊かにされます。私たちは少なくても、互いに敵でなく友であり、競争相手でなく、信頼し支え合う者たちです。

  このことはキリスト教世界という大きな群れの中でもそうです。アジアに出かけて行って保健医療で奉仕をすること、障害者問題に取り組むこと、平和と核の問題で働くこと、日韓問題。その他色んな社会問題を私たちに代わってして下さっている人たちは、私たちの仲間、良き友であって敵ではありません。彼らは私たちの行き方とは違うと、突き放さない。むしろその働きに感謝します。

  また、諸教派は人の目から見れば大きく3つに分裂し、更にプロテスタントは色々に分裂しているでしょう。でも、神の御目からすれば一つです。ただ一つの種から育ち、枝分かれすることで多彩な働きができるようになった訳で、多様な教派の働きの中で私たちは一つです。

  ですから今日の聖書は、神の国の働きの多様性と、多様性の中での一致、私たちはキリストの御目からすれば一つだということを証ししているのです。他者を否定すれば、必ず神の働きの否定につながるでしょう。神に敵対するでしょう。

  教派は沢山存在します。しかし「実際には『唯一の教会』が存在するのみ」です。そして「この『唯一の教会』はすべての教会の隠れた基盤」なのです。「一致は築き上げられるべき何かでなく、発見されるべき何か」(オリヴィエ・クレメント)なのです。私が、キリストの御目からすればただ一つだと言ったのは、このことです。

  このようにして、たった一つのからし種が育ち、今や、世界に大きな枝を張るものとなっているのです。まさに大きな枝です。素晴らしいことであり、大きな喜びです。諸民族、諸国民、言語や国境や政治体制も越えて、深く地に根を張り大きく枝を張っています。

  今後、この大きな枝が私たちの身近な所で小枝や細枝を伸ばし、例えば私たちの小さな教会にも多様な様々な小鳥たち。色々な職業の人や地位の人、また障碍を持つ人や底辺で苦労する人たちまた外国人も集って、その多彩な人たちが競争するのでなく、みんなの喜びであり感謝である教会になりたいと思います。

  今日の聖書は、その将来を私たちに約束してくれているのではないでしょうか。神の業は私たちの思いを越えてダイナミックに働くのです。今、リフォームで素晴らしい新しい器が出来つつあります。小規模の改修と思っていましたら、新築とほぼそっくりになりそうです。この器に何が入るか、どんな内容が盛られるのか、楽しみにしましょう。


          (完)


                                          2011年1月30日


                                      板橋大山教会   上垣 勝


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