地下700mから生還した19歳の青年の手紙
中央公園からのハギア・ソフィア大聖堂の全景
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その所で生き、信仰を糧とせよ (下)
詩篇37篇1-6節
(3)
「悪事を謀る者のことでいらだつな。不正を行なう者をうらやむな。…主に信頼し、善を行え。この地に住みつき、信仰を糧とせよ。…」と聖書は私たちに語るのです。
なぜ主に信頼し、あなたが生きるところで信仰を糧として生きよと言われるのでしょうか。
チリの銅鉱山の地下700mに囚われていた33人の人たちが、ほぼ70日ぶりに世界の人たちが見守る中で全員救出されました。鉱山近くの県庁所在地の町は学校が休校になり子どもたちは祈りつつ家で救出劇を見守ったそうです。
一人ひとり地下からカプセルに乗って出てきましたが、まかり間違えばあの穴は世界一深い墓穴に一転する穴でした。地底から一人ひとりが産道を通って生み出されるような光景でした。本当に良かったと思います。
チリの経済の何と40%は鉱山業に頼っています。ですからあの救出作業は、国の死活問題でもあったでしょう。私は改めて、あの最後に救出された53才のウズルアさんの素晴らしい指導力に感動しました。皆さんもそうでしょう。
今回、もう一人の人に感銘を与えられました。19才の最年少の青年です。日本ではまだ紹介されていないと思いますが、彼はまだ地下にいた時、地上に手紙を届けていました。そこにこう書いていました。
「自分はこの地下で口では表現できない何かを感じています。」言葉では言い表せない何か不思議なものを身に感じるというのです。「万一全員が生きたまま生還するとすれば、今後自分達には何かをするように神が計画されているのでないかと思います。地下には33人が閉じ込められています。」新聞でもテレビでも確かにそう報道されました。「しかし、実際には34人いるのです。」33人でなく、34人が地下にいると彼は書いて来たんです。「なぜなら、もう一人、神がいつも私たちのそばにいて歩き廻っておられるからです。」
旧約聖書のダニエル書に、真っ赤に燃えさかる火の炉の中に3人の信仰者たちが投げこまれたことが出てきます。ところが3人は焼き殺されなかったのです。見ると、第4の者が火の中を自由に歩き廻っているのが見えた。それは神の子のような姿をしていたとあります。
彼は地下700mで何か口では表現できないようなあるもの。もう一人、神の子のような者が一緒にいるのを感じていたのです。
なぜどんな所におかれても、「その所で主に信頼し、善を行なえ。その所に住みつき信仰を糧とせよ」と言われているのか。それは表面では見えないが、信仰の目で見るならそこにもう一人の方が歩き廻っておられるからです。
先程の重い障碍を持つAさんも大変な苦労だけれど、信仰の目でご覧になれば既にそこにもう一人の方が歩き廻って一緒に歩んで下さっているということでしょう。
だから、「その所に住みつき、信仰を糧とよせ」と言われているのです。
こんにち、神に根を下ろし信仰を糧として生きることが、この社会に最も深く根を張るために必要なものではないでしょうか。目に見える部分は氷山の一角に過ぎない。その7倍も隠れた部分、目に見えるものよりもっと重要な隠れた部分、神に根を下ろすなら、本当の心の平和、落ち着き、倒されても倒れない力が与えられるでしょう。
私たちは誰もやがて死に行く者です。ノーベル賞受賞者であっても例外はありません。皆忘れられるでしょう。イチロウも例外ではありません。だが人間が根ざしている命の根源は神です。イエス・キリストです。この方は私たち人間を照らす世の光です。この方に人の命があります。
(完)
2010年10月17日
板橋大山教会 上垣 勝
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