あなたは死者の中から復活する (下)


後ろに見えるのがスイスの首都ベルンの時計塔。5百年間、時を刻み続けています。安宿でしたが時計塔近くのホテルは快適でした。 
  
  
 
  
                                           あなたは死者の中から復活する (下)
                                           フィリピ3章10-11節
    
  
                                 (4)
  私たちはこのお正月からフィリピ書を時どき学んできましたが、パウロがこの手紙で、心を合わせ、思いを一つにしなさいと語り、常に喜びなさいと繰り返し勧め、互いに愛し合いなさいと説くのは、フィリピの人たちにもキリストに何とかして報いてもらいたいからです。

  この「キリストのために何とかして」という思いは大切です。

  私は毎日キリストの前に静まり、テゼの歌を使って賛美を繰り返し歌い、祈ります。それは日々襲ってくる恐れや誘惑から何とかして自由にして頂きたいからです。すなわち憎しみから自由になり、心の冷たさから解き放たれ、人を恐れず、繰返して人を赦す人間にして頂きたいためです。キリストの十字架の苦しみが、恵みに変わり愛となって心が満たされ、復活の希望が心に宿るまで何度も何度も賛美を歌い続けます。主の喜びと平和が、単純なキリストへの信仰が心に宿るよう歌います。

  余りにも心は複雑だからです。人と社会の複雑さがそれに輪をかけて来ます。ですから、何とかして、キリストの心に満たされたいのです。そのような祈りなしに、私は人を愛し赦せるとは思えません。日々の祈りなしには、赦そうと思う心も真実には起きせん。皆さんはどうでしょうか。

  先ほど礼拝前に、オバマ大統領の演説をちょっと目にしました。全部でなく前半しか読めませんでした。そこで目に留まったのは、「国家は他の国家の成功で恐れる必要もない」という言葉です。また、「勢力圏づくりを競うのでなく、協力圏づくりを深めることでアジア太平洋は前進していく」と述べていました。恐らく中国の台頭を念頭においているでしょうが、私の心に深く刻まれました。

  オバマさんだって、色んな感情を抱くでしょう。煮えたぎる思いが起ることもあるでしょう。しかし、それを信仰で乗り越え、ああいう発言になっている。彼も主を信じる人間として、何とかしてキリストの心で満たされ、恐れを振り払って、信頼を創り出そうとしている。それが子どもじみた事をやめ、対立と不和を乗り越える道であると考えるからです。背後の祈りなしにあの発言は生まれるものではありません。

  パウロが、「何とかして死者の中からの復活に達したい」と語ったのは、彼もまたキリストの恵みに与り、獄中にあって何とかして自分に打ち勝ち、人を愛し、赦し、望みを失いかけてもそれに抗ってなお望みを抱き、キリストの喜びに与りたいからではないでしょうか。彼は他の所で、自分の体を打ち叩いて服従させるとさえ語っています。そのようにして、心に静かな清らかさが何とか宿って欲しいからではないでしょうか。

  死を前にして、どうして心が濁ったままであったり、怒りと妬みと責める思いや、荒れ狂う思いで、人を赦さず死んでいってよいでしょうか。

  私たちも彼も、キリストから招かれたのです。神に赦しの福音を聞いた人として、どうして自分を寛大に差し出さないで人生を終わっていいでしょうか。

         (完)

                                  2009年11月15日


                                      板橋大山教会   上垣 勝

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