希望のしるしを見つける人 (下)


    ジュネーブでは今カルヴァンの生誕500年が祝われこんなマンガが教会の壁にありました。  


  
                                              
                                              マルコ1章14-15節
  
  
  
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  私がこう言うのは、イエスこそ暗く決して良くない時代でしたが、ユダヤ社会の中で希望のしるしを発見していった人だからです。8月にお話しした、レプタ2つを捧げたやもめにも、イエスは希望のしるしを見つけられました。沢山捧げた金持ち達の方に希望のしるしを見られたのではありません。強欲なザアカイの魂にさえ残る希望のしるしを見つけられたのもイエスです。長く傷ついてきた長血の女は、イエスが立ち止まって混雑する群衆の中からお探しになられた女性です。彼女の信仰にも希望のしるしを見いだされました。福音書に書き留められている多くの事柄は、イエスが希望のしるしを発見する人であったことを物語っています。

  イエスの道は、驚くほど単純で、素朴で、静かです。決して叫び廻るものではありません。真実は、叫ばなくても、自ずとその真実さが現われるからですし、巧みな工作をしなくても、やがて明らかになるからです。

  イエスは今日の箇所で、「悔い改めて福音を信じなさい」と、「信じなさい」と強調しておられます。闇の力に圧倒されてはならない、福音が、神の国が来ていることを、全ての人のために神の愛が来ていることを信じなさいと言われるのです。マルコ12章で、イエスは「目を覚ましていなさい」と言っておられますが、それは、神の愛に目を覚まして喜ぶことです。

  旅行に出る前に、遠藤周作のことが新聞に載りました。慶応大学時代の同窓生であった女性が修道女になり、彼女にあてた書簡が見つかったと報道されていました。「日本の中で一見、神のいまさないように見えるどんな小さなものも、神を必死で求めていることを浮かび上がらせてみたい」と書いていたというのです。これはまさに「沈黙」のテーマです。そういう、希望のしるしを目を覚まして見分けることが大事です。愚痴を言う時間があれば、希望のしるしを見分けることに時を費やしたいと思います。

  どんな小さい愛のしるしであっても、それを喜ぶのです。喜びで私たちの小さな住処(すみか)を満たしていくのです。悲しみ、暗さに負けず、感謝で満たすのです。

  「悔い改める」とは、180度方向転換することですが、神の存在が分からなくなる暗い社会の中で、視点を180度方向転換し、粘り強い愛をもって共にいて下さる神を信じることです。ブラザー・ロジェは、「悔い改め」とは、「キリストに自分の過ちを委ねる信頼の躍動」であると言っています。自分の過ちをキリストに委ねる時、赦され、自由へと解き放たれ、今を思いっきり生き始めることができるのです。神に委ねる時、神の愛の赦しを経験し、神の方へと方向転換し、神に根を下ろして喜びをもって生きるようになるのです。

  これは素朴な信仰ですが、イエスは私たちが素朴さを持つように勧められます。

  先程、敬老祝福式を致しました。祝福を祈りましたが、私は、むしろこの皆さんが教会に与えられていることを、心から感謝したいし、ここに希望のしるしがあると思います。若者や小さい子どもだけが希望のしるしではありません。75歳以上の方々がいらっしゃるという事自体が嬉しいことです。

  なぜなら、75歳以上の皆さんは、信仰は決して裏切らないということを証しして来られました。これは長く信仰に生きた方でなければ証しできないことです。これは単純なしるしかも知れません。しかし、私はここに神様が静かに来ておられると思います。

  私自身はまだ実感がありませんが、80歳代になられると、20代30代では考えられない状態が訪れるはずです。日曜日のためにお体を整え、金曜日か土曜日にはお体を調節して来られている方もおありに違いありません。ご高齢の方は礼拝に出かけるために、そういうコンディション作りをしておられると思います。プロ野球選手みたいな方々です。そこには、神にだけ心を向けるお生活がおありです。こういう信仰が私たちのまたとない宝なのです。

  いずれにしろ、ぜひ私たちは希望のしるしを見つける人になって行きましょう。

        (完)

                                2009年9月20日


                                      板橋大山教会   上垣 勝

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