自由を生きる (上)


  
  
  
  
                                              
                                              ヨハネ8章31-32節


                                 (1)
  イエスはご自分を信じたユダヤ人たちに、「私の言葉に留まるならば、あなたがたは本当に私の弟子である」と言われました。

  イエスは、ご自分を初めて信じた人たちに言われたのですから、いわばキリストを信じて入信したばかりの人たちに、「私の言葉に留まるならば」と語られたのです。信仰というのは、繰返してキリストに立ち返り、そこからまた始めるものです。ルターも、「日毎に新たに神に聞き始める」と語っています。果たして自分に信仰があるのだろうかと、疑問の囁きが心の中に聞こえたり、実際に罪や闇で心が閉ざされることがあっても、神への信頼があれば闇の中でもなおキリストに向かって進んで行くのです。

  疑いや弱さや罪。そのようなものが心にさか巻く自分であっても、神が私たちから聖霊を取り去られることは決してありません。前方に光が見えなくても、キリストのみ声に全てを委ねて、その愛を受け入れれば、先に進めるのです。

  「私の言葉に留まる」とは、キリストのみ言葉が疑わしく思え、自分の思い込みだと感じる時も、また他の人からそう言われる時にも、なおその言葉に留まって先に向かうことです。振り返らずに、一回だけでなく何度もその言葉に信頼して、それに賭けて進むのです。

  エマオに向かう2人の弟子たちの話があります。イエスが取り去られて、悲しみながらエマオに向かう2人の弟子たちに、復活のキリストが現われ、静かに一緒に歩いて下さいました。そのように今は目にウロコの様なものがかかっているので見えないが、共に歩いて下さっている方があるのを信じて歩むのです。すると、エマオ途上の弟子たちが、宿に着いてから自分たちと話しておられたのはイエスだと分かったように、やがて目が開かれます。

  「見ないで信じる者は幸いである」とイエスはトマスに言われました。またヘブライ書に、「信仰とは、望んでいる事柄を確信し、見えない事実を確認することです」とあります。これは信仰の秘義とも言える言葉です。神が見えなくなる中で、神を信じて進む。信仰の秘訣がここに隠されています。

  以前申しましたように、キリストの言葉に留まるとは、その言葉の中に住みつくことです。そこに根を下ろして生きることです。根を下ろし、住み着けば安心なのです。

  去年の6月、Tさんたちの結婚誓約式に見事な紫陽花の鉢植えが前に飾られました。式の後それを教会に頂いて、暫くして教会の露地に下ろしました。今年花をつけるかと思っていましたら付けませんでした。でも、来年はつけるでしょう。根を下ろしたからです。楽しみです。今後、長年住みついて花をつけてくれるのを楽しみにしています。

  いずれにせよ、キリストの言葉に「留まる」とは、ギリシャ語の元の言葉は、「住みつく」とか根を下ろす」という意味なのです。

                                 (2)
  ですから、キリストの弟子とは、キリストの言葉を陣地みたいにして生きる人だと言っていいでしょうか。陣地ですからそこから戦いに出る基地でありますし、その陣地で生活する人というか、キリストの言葉に生きる人でしょう。キリストの言葉に生きるのは、その言葉が支えてくれるからです。意気阻喪している自分を慰め、励まし、勇気を与えてくれるからです。

  ですから、「私の言葉に留まるならば、あなたがたは本当に私の弟子である」と、信じて間もないユダヤ人達に言われたのは適切です。イエスは、彼らが一人ひとり信仰の大木に育つことを願っておられるからです。むろんここにおられる若い皆さんも、イエスは、やがては年経た大木に育てようとしておられます。イエスがどう自分をお育て下さるか楽しみにしてください。むろん大木だけがいいわけじゃあなくて、山に行きますと色んな太さの木がありますし、色んな木肌の木があり、細い木でも年輪を経た木には独特の貫禄があります。独特の個性、曲がり、歪みも、癖もあってこそいいんじゃあないでしょうか。シミも歓迎、皺も歓迎、たるみも歓迎。まるで自分に向って言っているみたいですね。

  「あなた方は」本当に私の弟子であるというのです。個人ではありません。あなたがたです。あなた方が多様な弟子であり、イエスにおいて赦し合い、心を一つにして行くなら素晴らしい群れであることができます。素晴らしい「群れ」であること、これが大事です。

         (つづく)
                                  2009年8月9日

                                      板橋大山教会   上垣 勝

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  (今日の写真:オルセー美術館で ③ )