レッツ・ダンス (下)


  
  
                                               
                                              ゼファニヤ3章4-17節

  
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  先週、人類が始めて月面探査をしてから40年を迎えました。40年も前に人間が月に行ったとは驚くべきことです。当時私たちは、宇宙服を着た人が月面をフワフワと歩く姿を食い入るように見とれました。宇宙に出たアポロ飛行士たちの殆どが不思議な体験をして帰って来たようで、その神秘的な宇宙での体験を書いています。

  余りにも神秘な宇宙に触れて、その後ある宇宙飛行士は、気がふれたかのように本気でUFOを追う人になりました。ある人は画家になって今では170もの宇宙の作品を描いています。だが、ある人はアルコール中毒になり鬱病にもなりました。その他、色んな生涯を送っています。

  私の一番興味があるのは、アーウインという宇宙飛行士です。彼は地球から刻々離れていく飛行船の中から見た様子を伝えました。「地球は、真っ暗な闇の中に吊るされたクリスマスツリーの飾りのように見えます。遠のけば遠のくほど、ビー玉のように小さくなり、想像しうる限りの美しいものになります。美しく、温かい、極めて壊れやすくみえる生命体。非常にデリケートで、もしそれに指で触れれば、バラバラになって砕け散ってしまいそうです。」

  拙い訳で申し訳ありませんが、拙くてもその感動が手に取るように伝わってくる素晴らしい文章です。彼は、宇宙で神の存在に触れて、2年後にキリスト教の伝道師になりました。

  皆既日食を見たら人生観が変わるそうですが、彼は宇宙で実際に人生観を変えられました。神の創造のみ業は私たちを変えてしまう程の神秘性を持っているのかも知れません。

  詩編19篇に、「天は神の栄光を物語り、大空はみ手の業を示す。昼は昼に語りかけ、夜は夜の知識を送る。話すことも、語ることもなく、声は聞こえなくても、その響きは全地に、その言葉は世界の果てに向かう」とあります。ここにも神の創造の神秘性と美しさに心打たれた人がいます。

  神は私たちの手を取り、レッツ・ダンス!と呼びかけるために、私たちをお造りになられたのではないでしょうか。さあ、喜び躍ろう。今を生きよう。命を輝かそう。そう私たちに呼びかけておられるのではないでしょうか。私たちは神を賛美するために創造されたと言っていいでしょう。

  アルバニアという国はどこにあるかご存知でしょうか。世界地図が得意な中高生なら知っているでしょうが、多分大抵の大人の方は知らないでしょう。私もよく分かりませんでした。スイスのずっと東。ブルガリア・ヨーグルトのブルガリアの国に接している東ヨーロッパの国です。

  先日、フランスのテゼにアルバニア大主教が訪れ、世界中から来ていた青年たちと懇談しました。アルバニアは長く共産圏にあって、神の存在を全く認めない無神論国家を宣言して来ましたので、多くの教会の建物が破壊されました。だが18年ほど前に旧政権が崩壊し、亡命していた人も帰って来ました。イスラムが大半を占めますが、キリスト教は日本人に余り馴染みのない東方正教会です。

  その集会に参加したルーマニア若い女性がこんなことを書いていました。

  アルバニア大主教は、1991年に旧政権が崩壊してアルバニアに戻ることができましたが、友人に案内されて、瓦礫の山になってしまった教会を見て廻ったそうです。その時、友人が大主教に、「これでも君はまだ、キリストは復活されたと信じれるのかい」と尋ねたそうです。

  すると非常に素朴に、彼はこう答えたそうです。「私は、人々が手にローソクを持って、それに火を灯して欲しいと求めています。私たちが皆、他の人とともし火を分かち合うためであり、私もともし火をもらっていることを象徴しています。ともし火が消えたら、私は他の人からまた火をつけてもらうことができます。」

  ルーマニアのその女性は、これを聞いて、自分もともし火をともし続けなければならないという事。そして他の人たちと喜びをもって、また謙虚さをもってともし火を分かち合わなければならないという思いになりました、と書いておられました。ルーマニアの人たちも旧共産主義体制の下で圧制にあえぎ、ルーマニア修道院政治犯を匿って抵抗してきました。

  レッツ・ダンス!とはそういうことです。神が私たちに手を差しのべられるのです。ですから私たちも次の人に手を差し伸べて、レッツ・ダンス!ご一緒に躍りましょう。一緒に生きましょう。そう呼びかけなければならないという事です。

  かび臭い箇所を今日は開けました。しかしゼファニヤ書はたった3章だけです。いわば3畳の間の蜘蛛の巣を取り払ってみると、そこには私たちに語られている今日の最先端のメッセージがあると思いました。

         (完)

                               2009年7月26日

                                       板橋大山教会   上垣 勝


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  (今日の写真:オルセー美術館には駅舎の名残があります。 )