富に仕えない喜び (下)  マタイ6章24節


     
                                 (4)
  パウロは、「私は貧に処する道を知っており、富におる道も知っている」とフィリピ書で書いています。聖書は、「富を持つな」とは語っていません。「富に仕えるな」と語っているのです。「富におる道」とは、富をどう楽しむかという道でなく、富をどう神のために、人のために使うか、富をどう使うか、使い方の道を知っているというのです。

  キリストは神の子という莫大な富を持っておられました。だが、それに固執しようとは思わず、僕となって人に仕えられました。人間にその富を分かち合われました。

  富もまた神の支配下にあります。支配下に置かねばなりません。富も神の僕なのです。その時、富は豊かに祝福されるのです。

  このお正月、2家族が集まって正月を祝いました。息子とA子さんのアイディアで、贅沢なおせち料理は作らないで、彼らが何か簡単なものを持ってきて料理もしてくれ、立派なおせち料理との差額は献金して、海外の困っている人たちに送りましょうということになりました。これは皆、A子さんの提案で、私たちの家に新鮮な風が吹き込んで来た、新しい遺伝子が上垣家に入って来たというので、喜びました。

  たった5,150円でしたが、JOCSに送り、おせち献金は本当にすがすがしい正月にしてくれました。小額であっても祈りとスピリットがこめられていることが大切です

  私たちは、富の支配下にありません。富の支配下にないだけでなく、グルメや美食の支配下にも貪欲の支配下にもありません。美食はダメとは言いませんが、美食の欲に支配されて、神に仕えることを忘れちゃあならない。

  私たちは、エルサレム入場のときに用いられた子ロバのように、「主がご入り用なのです」と言われていますから、主のご用のために仕えなくっちゃあなりません。

                                 (5)
  「誰も、二人の主人に仕えることはできない。一方を憎んで他方を愛するか、一方に親しんで他方を軽んじるか、どちらかである。」

  公務員は、2人の主人に仕えてはならない。他の仕事を掛け持ちでしちゃあならない。ここにおられるのは女性が多いですが、もし夫が二人いればどうしますか。一妻多夫というわけです。喜びますか。一人でも大変なのに、そりゃあ、もう大変です。私の知人は、ご主人が15年ほど前に亡くなりましたが、「清々した」と言っていました。そんな方ばかりではないでしょうが。

  やっぱり一人の主に仕えなければうまく行きません。

  「あなたがたは、神と富とに仕えることはできない。」神のみを神とすることは、幸いなのです。反対からいえば、富に仕えないことは、幸いなのです。富は仕えさせられ、隷属させられ、思い煩いのとりこになってしまいます。

  しかし、富に仕えず神に仕える時、喜びが生まれます。心がシンプルになる幸いです。これは的を射ているという喜びが起ります。平和、平安が心に生じます。富からの自由が持つ喜びです。

  私は時々、ダグ・ハマーショルドの本を手にします。1年に1度か、2年に1度ぐらいです。彼はこう書いています。「人として、この世にあること。大地から自由であり、大地を祝福すること。」

  国連が生まれて間もなく、名事務総長として各地の紛争を解決して活躍しました。アフリカでヘリコプターが撃墜され、一命を落としました。しかし本当にいい仕事をしました。大地を祝福したのです。

  大地から富から自由である時、人と大地を、隣人を祝福できるのです。富に仕えない喜び、その様な高尚な魂を目指して行きましょう。太一から自由であるというこの高潔さこそ、人々に真に仕える奉仕を生むことができるでしょう。

  白十字特別養護老人ホームで毎月聖書の集いがなされています。先週Bさんたちと行った時は、入居者とボランティアとで20人ほどが集いました。この集いの最高齢者は99歳の女性です。それに続いて97歳の男性、96歳の女性です。

  97歳の方は去年から参加されました。初めて出席された時は不安そうでしたが、だんだん平和なお顔になって来られています。先日、自分のお葬式は牧師さんにして頂けますかと依頼されました。娘さんもそれを願っていると聞きました。

  聖書の話を聞くうちに、神のみを神として人生の最後を締めくくって行きたいと思うようになられたのです。富に仕えない喜び、神にのみ仕える喜び、そういう喜びを持って人生を閉じたいと言うことです。

  イエス様の言葉は、97歳の方の心にも十分届くんだということを知り、神様に感謝しました。「神の手は短くはない」と聖書にあります。
        (完)

       2008年3月30日                              
                                   板橋大山教会   上垣 勝

  ホームページはこちらです:http://www.geocities.jp/itabashioyama_ch/

  (今日の写真は、クリューニ修道院フランス革命で徹底的に破壊された教会は今修復されつつあります。)