ペンテコステは霊が乗り移った状態ではありません


ゴルナーグラートから見るグレンツ・グレッチャー氷河。左端の山がモンテ・ローザ4634m、正面はリスカマン4527m。
                                               (右端クリックで拡大)


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                                                 聖霊に満たされた人々 (上)

                                                 使徒言行録2章1-4節


                              (1)
  今日はペンテコステ礼拝です。弟子たちに聖霊が降り、教会が誕生した日です。ペンテコステがなければ、今日の教会はありませんし、世界の歴史はまた別の歩みを辿ったでしょう。

  今日は2章から4章までの所から福音を聞きたいと思いますが、先ほどの聖書に、「五旬祭」とありました。ギリシャ語聖書でペンテコステとなっています。ペンテコステとは第50日という意味で、ユダヤの過ぎ越しの祭りから50日目、イエスが復活して50日目ということです。

  「一同が一つになって集まっていると」とあるのは、1章15節に、使徒たちを含む120人ほどの弟子が、一つになって集まっていたという事を受けています。ただ、この時は喜びの内に一つになっていたのでなく、イエスが磔にされて、彼らも捕まりはしないかと恐れと恐怖で、身を固くして一つになって集まっていたのです。

  イエスは、「私の言葉に留まるならば、あなたたちは本当に私の弟子である。あなたたちは真理を知り、真理はあなたたちを自由にする」と言われましたが、集まった者たちは自由や喜びや解放感でなく、重苦しい沈黙が支配し、ユダヤ当局者への警戒と緊張で息を潜めていたのです。

  120人が集まっていたのですから、既にこの時、教会が誕生していたという人もあります。しかし彼らにはどこにも喜びがありません。力強さも、自由も漲(みなぎ)っていません。キリストを宣べ伝えようなどという事は、これポッチもない。喜びがなく、伝道がなく、教会を建てる思いもなく、自由がないところが、どうしてキリストの教会と言えるでしょうか。ここには、大胆さも、ここにこそ命を掛けるというものが始まっていません。

  それはやがて、聖霊によって恐れの殻が打破されて、喜びの集団へと、自由の溢れる集団へと変えられねばならなりません。今は集まっていますが、身を寄せ合い守りあっているだけです。まだ教会の前段階です。これが教会になる可能性はあります。だが教会にならない可能性もあります。海のものとも山のものとも判らない状態です。

  ところが、「一つになって集まっていると、突然、激しい風が吹いて来るような音が天から聞こえ、彼らが座っていた家中に響いた」のです。突風が吹いて来たわけでなく、突風が吹いてきたような大きな音が天から聞こえ、家中に響き渡った。ビューンと言ったか、ドカンと言ったか、はっきりしないが大きな音がした。

  そして、「炎のような舌が分かれ分かれに現れ、一人一人の上にとどまった。」炎に譬えられています。熱くなかったでしょうか。舌は炎のように赤かったでしょうか。一人一人の上に留まったのは、舌だったのかそれとも炎だったのか。先程のお祈りに、エル・グレコ聖霊降臨の絵の祈りがありましたが、ここを読むたびに、分かりにくさが残ります。

  いずれにせよ、弟子たちの想像を超える予期せぬ出来事が起こったのは確実です。それは人間の一切の思いと関係なく、神からの一方的な働きかけとして起こったのです。その結果、弟子たちの身に大きな現実的変化が起こりました。

  社会や外の世界でなく、先ず彼らの心の内面に働きかけ、彼らが聖霊に満たされて語り出したのです。「一同は聖霊に満たされ、“霊”が語らせるままに、ほかの国々の言葉で話しだした」とある通りです。

  ただそれは、霊が乗り移ったような、何かに操られたような語りや、恍惚状態、いわゆるトランス状態になっているのではありません。

  英訳聖書では、「聖霊が、彼らを様々な外国語で語ることができるようにした。そのような力を与えた」となっています。

  忘我とか、目がつり上がってトランス状態になるとか、発狂した状態ではない。むしろこういう状況の中で、冷静さと落ち着きが彼らを支配しています。

  我を忘れ、忘我状態にあったのは、むしろ6節にあるように、あっけにとられ、呆然と見ている群集たちです。その多くはエルサレムに諸外国から帰って来ていた巡礼者たちで、物音を聞きつけて集まってみると、弟子たちが、巡礼者たちの地元の言葉、外国語で語るのを聞いたのです。

  不思議な現象でした。7節に、「人々は驚き怪しんで言った」とありますが、この異常な光景をいみじくも表しています。

  これが、ペンテコステに起こった最初の出来事でした。

          (つづく)

                                        2014年6月8日


                                        板橋大山教会 上垣 勝



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