日本キリスト教団の大きな恵み (上)


  
  
  
                                              フィリピ1章27-30節
 
 
                                 (1)
  パウロは今日の所で、「ひたすらキリストの福音にふさわしい生活を送りなさい」と勧めています。

  「キリストの福音にふさわしく」とは、この前、フィリピの手紙を取り上げた時に申しましたように、キリストが私たちをご覧になるように、私たちも自分を見、また隣人と世界を見ることだと言っていいでしょう。自分も隣人も、冷たい裁きの目や絶望の目で見ないで、暖かい愛の目で見るということです。「全ての者のために最上のことを望む」こと、隣人に祈り心をもって生きること、キリストのみ心に沿って生きることです。

  パウロは、「ひたすら」と強調しています。彼はそこに焦点を絞った生き方を強調します。なぜなら、キリストの福音にふさわしく生きようと「ひたすら」しないと、私たちは罪や咎が多く、曲がった生き方をしがちだからです。

  パウロは前回ところで、キリストを宣べ伝える者の中にさえ、残念なことに、「不純な動機」から、獄中のパウロを一層苦しめようとしている人たちがいると書いていました。福音を説きながら、実生活では福音から反れて、福音にふさわしく歩いていない。そうならないように、「ひたすら福音にふさわしい生活を送りなさい」と言うのです。

  現代人は、教育を受けますから批判眼が育ちます。ただ自分への批判眼は余りよく育っていません。ですから、自分の目の中の丸太は問題にしないで、人の目のチリを問題にする。そういうことが多くあります。パウロを批判する人たちは、そういうことが多くあったのではないかと思います。

  しかし、それは他の誰かの話じゃあなくて、自分がそうでないかと思います。先日、知人たちと話していて、一人の人が青年時代を振り返って、自分は弟から、「兄さんは自分を全否定するような言い方をする」とよく言われたということを話しました。それを聞いたある牧師が、自分も、家内から、あなたは全人格を否定するような言い方をする」とよく言われると言いました。私は黙っていましたが、実は私も、「全人格を否定するような言い方をしないでよ」と言われて来ました。私は、肯定より否定的な言い方が強かったと、今になって思います。同意したり、共感したりすることが少なかったわけです。

  私は、自己中心でもあったと思います。競争心もあったし、競争心が強いということは、自尊心も強かったからです。嫉妬心もありました。今からしますと、エゴグラムと言うのがありますが、あれで解析すれば私は随分歪んだ自我を持っていたのでないかと思います。

  しかし、いつの間にか、批判とか競争とかは影をひそめました。もう先が長くないかも知れません。

  それは冗談ですが、ただこれは歳のせいというより、神が私と共にいてくださると、心から感謝して思えるようになったからです。私は、テゼ共同体のイコンから、徐々にそれを悟ったと思います。私は、今も毎日それを見ることによって繰返し原点に戻っています。すると、「あなたは、それでよし」と、神様から言われている気がするのです。すると、他の人も受け入れることが出来るし、赦すこともでき、競争心で見るのでなく、そういう良いものを持つ人を周りに与えられていることを感謝できるようになりました。

  H.ナウエンは、「私たちは弱い者が集まった共同体であり、互いを赦すことと、祝福することで一つに結ばれている」と語っています。

  これは示唆に富んだ言葉です。人の現実を知った人の言葉だと思います。私たちは「弱い者が集まった共同体である」ということに絶えず立ち帰らなければならないのではないでしょうか。そこを忘れてはならないと思います。

  自分だけが弱いのではない。強く見える人も、実は弱さを抱えている。それに気づくと優しくなれます。私たちは、弱さゆえに強い言葉を吐く時もありますし、愚かさゆえにそうすることもあります。ですから、互いに赦すことと祝福すること、そのことに心留めたいと思います。祝福することは大事です。祝福するとは、原語で、「よろしいと言う」こと、あなたは「それで善しと語る」ことです。創世記の初めで、神は天地をお造りになり、それを見て「よしとされた」という、あれが祝福です。これが、パウロの言う、「キリストの福音にふさわしい生活」をすることでもあると思います。

               (つづく)

                                              2009年3月22日


                                      板橋大山教会   上垣 勝


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  (今日の写真;ヴェズレーの新しいタンパン。明日は古い12世紀のタンパンです。)